1.相続登記で漏れが生じやすい私道部分
相続人全員で遺産分割協議書を作成するうえで、注意していただきたいのが、相続財産として私道(公衆用道路)が漏れていないかどうかです。
被相続人が土地を購入したり、先代から相続や贈与で引き継いだ際の古い資料(登記済権利証等)が見当たらないという場合は、しっかり調査した方が良いでしょう。
というのも、固定資産の納税通知書に、非課税となる私道(公衆用道路)が記載されておらず、納税通知に記載された物件だけで、遺産分割協議書を作成してしまうと、私道(公衆用道路)が漏れてしまうケースがあるからです。遺産分割協議書の作成を急ぎすぎると、思わぬミスにつながってしまいます。
どんなに探しても、古い登記関係の書類が見つからない場合、管轄の法務局で地図、図面の写しを取得するなどして私道(公衆用道路)を把握し、土地・家屋名寄帳の閲覧までやっておおくのが無難です。
相続登記後に、不動産の処分を行う予定がある場合は、漏れのないよう特に慎重にやる必要があります。
2.私道(公衆用道路)の登録免許税の計算について
相続登記を申請する際には、法務局に登録免許税額を納付する必要があります。 この登録免許税の計算は、固定資産評価証明書に記載された不動産の評価額に0.004を乗じて算出します。
しかし、私道(公衆用道路)がある場合、計算方法が複雑になります。
私道(公衆用道路)の固定資産評価証明書を取得すると、価格の欄に「非課税」とだけ記載されているので、 一見すると登録免許税も納付しなくてもかまわないようにとらえがちですが、そうではありません。
先ず、私道の「近傍宅地(きんぼうたくち)」の1㎡あたりの単価を割り出したうえで、 「近傍宅地単価」 × 30/100 × 地積 を算出して、私道(公衆用道路)の価格を出します。
最終的には、宅地と公衆用道路の価格を合計して、40/1000 を乗じます。
また、「近傍宅地単価」については、不動産の管轄によって割り出す方法が異なります。事前に管轄の法務局に確認するのが無難です。
大きく分けて、①管轄の法務局が計算の基になる「近傍宅地」を指定する方法、②市区町村役場で固定資産評価証明書を取得する際に、「近傍宅地単価」を記載してもらう方法があります。
①では、私道(公衆用道路)とともに登記する宅地を近傍宅地に指定するケースもあれば、 公図、相続登記の対象物件の資料を基に判断し、複数の近傍宅地の単価の平均値を、「近傍宅地単価」とするように指定されるケースもあります。
3.私道の登録免許税の計算例
甲土地は宅地、乙土地が私道(公衆用道路)の場合、相続登記で納付する登録免許税を計算してみます。
・甲土地の地積 100㎡(評価額2000万円)
・乙土地の地積 10㎡(非課税)
本ケースでは、乙土地(公衆用道路)の「近傍宅地」が甲土地であるとします。
【甲土地の登録免許税】
甲土地だけの登録免許税を計算すると、
2000万円 × 4/1000 = 8万円
よって8万円が登録免許税の金額になります。
【乙土地(私道)の登録免許税】
乙土地だけの登録免許税を計算する場合、
1.先ず、近傍宅地である甲土地の1㎡あたりの単価を計算します。
2000万円 ÷ 100㎡ = 20万円/㎡
↓
2.近傍宅地の1㎡あたりの単価に30/100を乗じます。
(公衆用道路の価格は「近傍宅地の100分の30に相当する価格になります」)
20万円/㎡ × 30/100 = 6万円/㎡
↓
3.6万円/㎡に、乙土地の地積を乗じます。
6万円/㎡ × 10㎡ = 60万円
よって、乙土地の価格が60万円となります。
↓
4.乙土地の登録免許税も、甲土地と同様に 4/1000 を乗じます。
60万円 × 4/1000 = 2400円
よって、2400円が私道部分の登録免許税となります。
甲土地と乙土地をいっしょ登記する場合、
2000万円 + 60万円 = 2060万円
2060万円 × 4/1000 = 8万2400円
登録免許税は、8万2400円になります。